完璧な男の中身

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「ただいま……」 この香りがすると、家に帰って来たと安心する。飲みかけのジャスミンティのペットボトルをテーブルに置き、クッキーを摘まもうとすると 「ひまりぃー、陽鞠!ちょっとお店来てぇー」 今日はポプリの教室の日なので、お客様はあまり来ない。たまに来るとこうして私にお呼びがかかる。まだ制服のままだけどいいか…とりあえずエプロンをしてお店に出た。 「いらっしゃいませ」 店内の奥で、4人の女性がサシェ作りを習っている。入り口には常連さんの姿が見えた。週一回は必ずウチに寄ってくれて、私も大好きなアップルミントのキャンディとハーブのクッキーを大量に買ってくれる素敵な外国人のお婆さん。 ウチのお客様は外国の方も多く、大抵1回来てくれるとリピートで来店というパターンが多い。スパイスはもちろん、ハーブの種類も多いらしい。 今日もお婆さんは、大量にお菓子を入れたカゴをレジの前に持って来てくれた。 「孫が大好きなんですよ。すぐになくなっちゃうの」 「そうなんですね!私も常に持ってます。ついつい食べちゃって…」 笑顔も可愛いし、オシャレなスカーフ。グリーンの綺麗な瞳も印象的で、私の老後の憧れの存在。荷物が多いので、お店の外までお見送りすると 「有難う。また来ますね」 とニッコリと笑ってくれた。お店に戻ると、私もサシェ作りに参加。クローゼット用が作りたかったし、ここで一緒に済ませてしまばいい。好きなハーブを調合していると 「陽鞠!入り口にウチの買い物袋が忘れてあるよ?」 「えっ!?」 母が買い物袋を持って、お店に戻ってくる。さっきのお婆さん忘れて帰ったのかな? 「届けてくれる?住所は分かるから」 お婆さんも教室に参加した事があり、住所は控えてある。私はメモをすると、自転車に乗って自宅まで届ける事にした。
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