完璧な男の中身

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教室はそれ以降行かなくなりそれっきり。でも、今からなら趣味で始めてもいいかもしれない。 「どうぞ!召しあがれ?」 綺麗な正方形でカットされたパウンドケーキ。中にはクルミやナッツが沢山入っているようだ。フォークでカットして口元に運ぼうとすると甘いバナナの香りが鼻をくすぐった。 「いただきます!」 バナナとナッツ類の相性は抜群で、しっとりと焼き上がった生地は思ったよりアッサリと食べやすい。これは幾らでも食べれそうだ。 「凄く美味しいです…!」 「良かった。沢山食べてね」 お言葉に甘えて3つペロリと食べてしまった。お婆さんは嬉しそうに微笑んでくれると 「また食べにいらして下さいね」 優しくそう言ってくれたけど、『私はお譲さま向きではないなぁ…』と遠慮のなさが恥かしくなった。厳密に言うと、あと2つ食べれたので、少しは控えたつもり…だけど。ハーブオイルやキャンドルについて少し語り合った後、そろそろ帰ろうとしてエプロンに手を置いた。すると、玄関の方から ――ガチャっ!! 音がしたので、誰かが帰宅したのだと分かった。 「そろそろ私、失礼します…」 「そうですか?もう少しゆっくりされてもいいのに」 「今度ウチでハーブティを御馳走しますね!」 私が立ち上がった所で、帰宅した人が顔を覗かせた。 『げっ!?冷酷王子!!』 相手は特に驚いた様子もなく、キッチンへ向かっていった。 「奏真…挨拶くらいなさい!」 相良奏真(さがら そうま)かぁ…。名前までカッコイイなんてね。今までフルネームは知らなかったクセに更にイラッとしてくる。完璧すぎると何故か癪に障ってしまう。凡人の嫉妬かもしれない。 「えっ?少なくない?」 ギクッとする一言だ。私が結構食べてしまったから、王子が食べる分が減ったのかもしれない。ここはサッサと帰る方が賢明だ。お婆さんに見送られながら玄関に向かうと 「俺、送って行くわ」 思わぬ言葉に驚きを隠せなかった。まさか…お婆さんの前では猫を被っているの?
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