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「これだけ、苦労して探したんだから当然だ。まぁ、陽鞠は女子に苛められないよう気をつけて」
そう吐き捨てるように言うと、満足そうに走って行ってしまい、私は愕然として歩くスピードが一気に下がってしまった。重い足取りで教室に入ると
「陽鞠、おはよう!」
何も知らない香織は、いつもの調子で声をかけてくる。腕を引っ張って教室を出ると、ザワザワした廊下の隅で事情を説明した。
「マージーで―!!!」
慌てて口を押さえつけたが、興奮は冷めないみたいだ。サインを練習させろとか、もう一度初めから聞かせてとか…
「私、何かの罰ゲームに利用されてたりして…」
溜め息まじりにそう言うと
「それが本当だったとしたら、私がこの手で成敗してやる!」
と拳を握ってウインクされた。何故か午前中に情報は伝わっていて、女子の視線をよく浴びる事になっていた。香織は私の机の前に立ってくれて、あまり視界に入らないようにしてくれている。
「面白くなってきたわ。放課後凄いんだろうな…」
香織は私のボディーガードをする気満々だが、私の頭の中は不安で一杯だった。
「陽鞠、飴持ってる?」
そんな私達の気持など全く関係なく、王子はフランクに教室に入ってくる。言われるまま、アップルミントの飴を差し出すと
「まさか、相良がバラしたんじゃないよね?」
ピンと来たのか香織が質問をした。
「まぁな。陽鞠は俺のもんって分かりやすいだろ?」
「意外と懐狭いわね。男としてはまだまだガキだわ」
「なっ!?俺は完璧なんだよ!抜かりがないと言って欲しいね」
その日は、放課後まで授業が終わるたびに飴をくれと教室に足を運んで来る王子。私の飴ケースの中は空っぽになっていた。
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