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「さっきユウヤが助けたの、まさかあれが例のニィナちゃん?」
ショッピングモールでの事後処理を終え会社に帰る車内、同僚が怪訝な表情を浮かべながらユウヤに尋ねた。
「あぁ」
一方ユウヤは、何でもないようのことにさらりと答えた。
「冗談だろ、犯罪じゃないか。あの子いくつだよ」
「確かに、10歳って言ってたかな」
「10歳って…………三十路前のおじさんがなんてことしてんだよ」
「別に何もしてないよ」
「だって好きだって言われたんだろ?ちゃんと断ったのか?」
「断ったよ」
「何て?」
「何てって『ありがとう。もう少し大きくなってからね』って」
「またか…………そういう曖昧な断り方するなって言ってるだろ、だから後々もめるんだって」
ユウヤは悔しいほどもてるが、優しいというかはっきりしないがためにトラブルになることも少なくない。同僚はなんども注意しているのだが、この悪い癖だけはどうにも直らない。
「それとも、あれか?光る君ってやつか?」
「ヒカルキミ?」
「源氏物語の光源氏のことだよ。子供を自分好みの女性になるよう育てたってやつ」
「冗談。俺にそんな趣味はないよ」
「さぁ、どうだか」
未来なんて誰にもわからない。
果たして、数年後、振り回されることになるのは、完璧な王子様か、それとも美しく成長した少女か。
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