私の王子は光る君

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 抱えられたニィナは必死にもがくが、海賊の腕は微動だにしない。フードコートにいる他の客達も、みな自分のことに必死でニィナ達を助けてくれる人はいない。  …………もうダメだ…………  エスカレーター近くまで運ばれたニィナは、絶望に目をふせた。あふれでた涙が頬をつたい、床へと落ちてゆく。  と、その時、視界の端で何かが動いたのに気がついた。上りエスカレーターの下、闇の中、影が動いたような気がした。  …………なに?…………  海賊の仲間か。ニィナがそう思うやいなや、影は驚異的な速さで動いた。闇の中を、音もなく、まるで滑るようにエレベーターをかけ上がる。 「なっ!!」  ニィナを抱える海賊がその人影に気がついた時には、人影は目前にまで迫っていた。そして、次の瞬間、ニィナの体は宙を待っていた。海賊が弾き飛ばされたのが見えた時、ニィナは誰かに抱き止められていた。 「この子に触るな」  低い、怒りに満ちた声。ニィナが声の主を見上げると、ニィナを抱きかかえている人影は優しい声で言った。 「もう大丈夫だよ、ニィナちゃん」 「…………ユウヤさん」  彼だと気がついた時、遠くで「民間宙安会社ライト・スターだ!」という声と怒号、そして歓声が聞こえてきた。  離れた場所から助け出されたらしいカナとトーマがこちらにかけよってくるのが見えた。  あぁ、やっぱり私の王子様だ。ユウヤの腕の中で彼のかっこよさにときめいていたニィナだったが、直後、彼に抱きかかえられているというこの状況にパニックにおちいるのだった。
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