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「やっぱり完璧だよね~。王子様だよね~」
ショッピングモールからの帰路で、カナとトーマは幸せモード全開のニィナに再びのろけを聞かされていた。ついさっき海賊に襲われるという恐怖体験をした人間とは思えないほど、ニィナは幸せそうだ。
「…………いや、でも絶対相手にされてないだろ」
あきれ顔で言うトーマをニィナはにらみつけた。
「なんでよ!そんなことないもん。今度デートの約束だってしたし」
確かに帰る前、ニィナはユウヤと、ユウヤの休みの日にあのショッピングモールへ行く約束をしていたが…………
「いやいや、それ、俺とカナも一緒にって誘われたじゃん。デートって普通二人きりじゃないのか?」
ユウヤは、最近は物騒だからと三人だけでショッピングモールへ来ていたことを注意し、なんなら今度の休みに一緒に行こうと言ってくれただけなのだ。果たしてそれをデートといってもいいものか。
「そんなことないもん。きっとユウヤさんはカナとトーマに気を使ってくれただけだよ」
ああ言えばこう言う…………トーマが助けを求めるようにカナを見ると、カナは淡々と言う。
「もうこれ以上なにを言っても無駄。ほうっておきなさいよ。いずれ自分で気がつくしかないわ」
「いずれって…………」
いいように前向きで思い込みの激しいこのニィナがいったいいつ現実に気がつくのか。トーマにはもう検討もつかなかった。
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