第2章  夢なら覚めて

11/15

158人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
だが、その行列の最後尾に並ぶと同時に、 私たちの前で、さんざめく女性たちの声に隠れるように、 彼が声を落として言ってきた。 「俺の勤めてる研究所って、この先の坂を5分くらい行った所にあるんだ。 だからずっと、この店が気になっててさ。 でもここ、昼間しか開いてないのに、 いつも居るのは、女性客かカップルだけなんだよ。 だから、なんか入るに入れなくてね」 低いがイソイソした彼の声音に、私は少し先の店内に視線を向ける。 確かに、並んでいる客も女性ばかりだし、 店内も、小物なんかをあしらった女性好みの赴きで、 男性一人では入りにくそうだ。 しかし、 「職場の人と行けばいいのに」 今日の目的も忘れ、ポロリと本音が零れた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加