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高鳴る心臓は収まることを知らないらしい。
依然として、身体中に血を流そうと、忙しなく鼓動する。
心拍数は、とうに100を越えているだろう。
―落ち着け、俺。焦るな。俺は、何も見ていない、んだ。何を慌てる必要がある?落ち着け。
俺は、心臓を通常業務に戻そう、と深呼吸をした。
いや、しようとして、大きく息を吸い込んだ、その時。
「2年A組。田中雅通。」
男子にしてはやけに甲高い、それでいてよく通る声が、俺の呼吸を停止させた。
「タナカじゃなくてデンチュウって読むなんて、面白いねぇ。」
今まさに通ろうとした校門、の死角、そこから現れたのは―
「確か、同じクラス、だったよねぇ?」
クラスメイトにして、『落研』部長、そしてさっき校長室にいた男子生徒でもある―鬼島であった。
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