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翌日。
―ねみぃ。
結局、昨日の夜はほとんど眠れなかった。
―ふらふら、する。頭、いてぇし。くそっ。
思考は鈍るばかりで。
授業も、ほとんど上の空だった。
「デンー。」
『デン』。
俺のあだ名。
そう認識するより早く、体が反射的に振り向いていた。
「ちー……」
俺を呼んだのは、『ちー』こと、茅原 千里[チハラ チサト]。
小学校からの幼馴染みで、その頃からずっとバスケをやっている。
普通に、上手い。
女みたいな名前が嫌だといつも愚痴っていた。
「よっ。……どーした?隈、すげーぞ?なんかあった?」
昨日のことは、誰にも言っていない。
「……別に。」
ぶっきらぼうにそう答え、欠伸を噛み殺す。
「ふーん。まっ、どーでもいーけどさ。それより、お前、発表すんのに大丈夫なのかよ、そんなんで。」
―発表?
「そんなんあったっけ……?」
どうにも思い出せない。
酸素不足の脳は普段通りには活動してくれないみたいだ。
「しっかりしろよ。先生が言ってたじゃんか。今日、グループ発表するから準備しとけーって。落研の部長がいるから落語やんなきゃになったって言ってたじゃん、お前。」
―グループ発表……?
記憶に検索をかけるが、全く出てこない。
昨日の“あれ”のせいで、記憶が吹っ飛んでしまったのだろうか。
しかし、それよりも―
「落研の部長って、鬼島?」
―あいつ、クラスメイトどころか、グループメンバーだったのかよ……
そんな大事なことを忘れていたなんて。
「そうそう、鬼島。……お前、やっぱり話聞いてなかったな。考え事か?溜め込むと禿げるぞ?」
「うっさい。……というか、それもこれも鬼島の―」
「アタシに何か用かぃ?」
背後に、いた。
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