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「アンタは弱みを握ったつもりになってるかもしれないが……勘違いするなよ?“それ”は弱みでもなんでもない。……さっさと忘れるんだねぇ。」
そう、言って。
どこからか、出した扇子を、仰ぐ、鬼島。
俺は、何も、言えなくて。
沈黙が、痛いほどの沈黙が、その場を包んだ。
その時。
「デン?」
扉の奥から。
「ちー……」
千里は、いつもの歩調で俺たちに近付いた。
「あんまりにも遅いから、先生に言って、迎えに来たんだ。教室にいなかったから屋上かなーって。……どした?デン。顔、真っ白だけど。」
そう、言われ。
滞っていた血液が、一気に、流れ出した。
「……何でもない。ありがと、ちー。」
何も知らない千里は、呆けて、
「ん?うん。どーいたしまして。」
と、微笑んだ。
俺は
「……行こう。」
と言って、その場を後にした。
背後からの視線を、ひしひしと感じながら。
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