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「盗み聞きだなんて……イイ趣味してるねぇ?」
言いながら扇子をパッと開く。
最早癖となってしまった行為だ。
「悪いか?私の役目には、キャンサー……お前の監視も含まれている。ただそれを実行していたまでのこと。文句があるなら我望様に言え。……言ったら言ったで許さないがな。」
―相変わらずの我望教だねぇ。どーせアンタも“駒”の1つに過ぎないだろうに。
「残念な男だねぇ……まったく。」
すると、ピクッ、校長の頬がほんの少し揺れた。
校長は基本的には感情を表に出さない。
だが。
「そんなんじゃあ理事長も落胆しちまうよ?」
ちょっと揺さぶってやれば。
「アンタが悠々としてる内に寝首掻いちまおうかねぇ。」
簡単に。
「……黙れ、キャンサー。」
ほら、崩れた。
今の校長の顔はいつもの彼のそれではない。
ふかふかベッドで熟睡していたら突然耳元で叫ばれた人のような、不機嫌な顔。
―そんな感情剥き出しにして……だからアンタは駄目なんだ。でも。
「だからこそ、アタシはアンタを好きになったのかもね。」
なんて。
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