10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
校長の弱みを握ってやった!しめしめ、などと思っていたら、鬼島が扇子を振りながら部屋から出ていってしまった。
1人になった校長。
腕を組み、溜め息を吐き、いつもの彼とは全く異なる表情で―こちらを見た。
瞬間。
俺の身体は反射的にしゃがんでいた。
彼の視界から隠れるよう。
声は、聞こえない。
しかし、コツコツ、と響く靴底の音は―ガラスに吸収されながらも―僅かに届く。
俺は、音を立てないよう、周囲の雑草や足元のコンクリートに気を付けながら、走った。
走った、というよりは、早歩き、という感じだが。
そして、曲がり角のところで隠れて、様子を窺った。
ガラガラと、立て付けの悪そうな音。
そこから彼が顔を出した、ので、俺は顔を引っ込める。
外に出てきたような音はしない。
―さすがに追っては来ないか。
最初のコメントを投稿しよう!