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半年前の事だ。
俺は黒のスーツを着て、タバコを吸うのを我慢しながら住宅街を彷徨いていた。
ここらはそれなりに裕福な住宅街。穏やかな雰囲気に、時折犬の鳴く声が聞こえる。玄関先をちらりと覗くと、ゴールデンレトリバーやら、ハスキーやら。血統書でも首輪に付けてそうな犬たちが、芝生の上で寝転がってたり、舌を出して息を切らしている。
俺はその場から離れて、他の住宅を値踏みしていく。三輪車や小さなボール、子供用自転車なんかが置いてある家が狙い目だ。ガキがいる家じゃねぇと話にならない。
怪しいモノローグが続いてしまっていたが、別に俺は児童性愛者でもないし、下見をする泥棒でもない。教育教材を売る、しがないセールスマンだ。
俺はカバンの中に詰まっている教材を思い浮かべて、
「……しかし、今時のガキはこんな上等なモンで勉強すんのか。俺よりよっぽど頭の良いガキに育ちそうだな」
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