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それから数分歩き、住宅を見渡す。ここらはガキのおもちゃを玄関先に出している家は少ないポイントだ。ガキのいる家は多少なりともその痕跡が目に見える形で残っている。
「……ここらはハズレだったな。確か、前に目星を付けた家はここから向こうで」
ガシャン……
皿の割れる音が聞こえた。
「……ん? なんか割れたな……。あっちからか……」
俺はその音が気になった。なんでだろうな。まぁ、人の気配を感じたんだから、近付いてしまうのがセールスマンの性なのかもしれない。そんなものが俺にあったとは驚きなのだが。
俺は音の出処であろう家の前に来た。玄関先を見渡してみるが、この家にガキがいるようには見えない。
やけに小奇麗な玄関。車が二台は入るガレージ。小さいながらも綺麗な庭。犬はいない。普通の家、にしては少し広いくらいだ。
ガレージには車が一台もない。二台停めてあったとすると、少なくとも二人が住んでいて、今は働きにでも出ているのか。共働きの夫婦、といったところか。
なら、この少し広めの家も、将来授かるであろうガキのためなのかもしれない。あの庭なんか、ガキを走り回らせるにはちょうど良さそうだ。
俺は狭い自宅を思い浮かべて、自虐的な笑みを浮かべようとした時に気付いた。
共働きの夫婦だったとしたら、今さっきの皿かなにかが割れた音は、一体誰の仕業なんだ?
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