「破綻を買うまで」

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嫌な予感がしてきた。ここは裕福な住宅街。泥棒も目を付けるだろう。しかも、ここは俺の見立てが正しければ共働きの夫婦の住まい。今は家の中がカラのはず。 「…………」 俺はツバを呑み込み、スマートフォンを取り出しながら、インターフォンのボタンを押した。逃げる影があるなら、すぐさま通報してやる。 そう思っていた。しかし、その期待は裏切られた。 インターフォンがなって数秒、足音の後に、玄関が開いた。そこにいたのは、 「………………」 とてもとても、みすぼらしいガキだった。 否、痛々しいガキだった。 俺は困惑した。何故子供がいるのかと。今までの経験から、俺はこの家にガキがいるとはとても思えなかったから。 そう、普通の家庭なら、目に見える形で、ガキがいる痕跡が残っているはずなのだ。 だから、あの家は普通の家庭じゃなかったんだろう。 外面は綺麗で、しかし内側をおぞましい、家庭だったのだろう。
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