綾城祭

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「…………っ」 「────サヨナラ、リンちゃん。……ありがとう」 「………ゆっ、……優く……」 私は無我夢中で、彼の体にしがみつく。 「君にまた会えて、よかった。夢を叶えてくれて、ありがとう」 「優くん…、優くん」 「大好きだったよ、リンちゃん。君は僕の初恋だった」 彼の声が、徐々に涙で滲み始めた。 私の両目からも、涙が溢れ出す。 「私、絶対に忘れない。優くんのことも、あの曲のことも、一生絶対忘れない」 「…………うん」 「ありがとう。……ホントにホントに、ありがとう。……ありがとう」 好きになってくれたこと。 会いに来てくれたこと。 素敵な曲を、聴かせてくれたこと。 …………ありったけの想いを込めて。 私は優くんに、ありがとうを伝えた。 ありがとう。 ありがとう。 ありがとう。 ────そして、サヨナラ。  
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