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◇◇◇◇
その後、折坂くんが調べてくれたけれど、芸術コースに国立 優という生徒はいなかったらしい。
ここのピアノ科に入ったのかと思ったけれど、優くんは別の学校に進学したようだった。
「結局、三日かかっちゃったね……」
小学校の時に通っていたピアノ教室へ向かいながら、私は疲れとも安堵ともつかない溜め息を零した。
落ち着いたらお墓参りに行こう、と、折坂くんが言ってくれたのは、学祭が終わった日のこと。
本当ならすぐに行きたかったのだけど、委員会の事後報告やら、売上げの配分やら、何やかやとすることが多く、結局全てが終わったのは学祭が終わってから三日経ってのことだった。
優くんの住所も知らなかったので、手がかりは通っていたピアノ教室のみ。
私の記憶では先生は優くんの親戚だったはずだから、優くんの詳しい話も聞けるはずだけど……。
「えっ、長谷部って……もしかして、リンちゃん!?」
大してピアノが上手くもなかった私のことを先生が覚えてくれているのか不安だったけど。
出迎えてくれた先生は、すぐに私だとわかってくれた。
5年前の記憶の先生とあまり印象は変わってなかったけど、心なしか疲れているように見えた。
「ご無沙汰してます、先生」
「ホントに久しぶりねぇ。待ってね、今お茶淹れるから」
突然の訪問にも関わらず、先生は私達を歓迎してくれた。
私は慌てて手を横に振る。
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