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◇◇◇◇
ガツン!と。
頭を固いもので殴られたような衝撃だった。
私は始めから、ずっと思い違いをしていた。
初めて彼が折坂くんの体を借りて現れた時。
優くんはまだ、死んでなどいなかったのだ。
私の前に現れたのは、小学生のままの優くんだった。
そう思うと、感じていた違和感の意味も、わかってくるような気がした。
元々大人びた子だったから気付かなかったけど、時おり感じた少年のような無邪気さも、下心なんてまるで感じない無垢さも。
私に対する真っ直ぐな想いも……。
現在進行形の、初恋だったから。
私と離れて間もない頃に遭った、事故だったから。
その純真な想いを抱えたまま、彼は長い眠りについてしまったから……。
「自分の死を悟って……。それであんたに会いに来たのかな……。どうしてもやり残したことを、死ぬ前にやっておきたくて……」
先生に教えてもらった住所を頼りに優くんの家に向かいながら、折坂くんが、重々しく口を開いた。
先生の話を聞いて折坂くんも驚いたと思うけど……彼なりに色々思うことがあったようだ。
「………うん」
私は、静かに頷く。
優くんと二人で乗った観覧車が駅を降りてからずっと視界の中にあって、それが妙に切なかった。
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