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◇◇◇◇
祭壇に向かって手を合わせている間、お母さんはお茶を淹れに台所へと向かった。
飾られた優くんの写真を見て、私の胸は強く締め付けられる。
こちらに向かって微笑むその顔は、私の記憶にある優くんそのままで。
………それは小学生で、彼の時が止まってしまったのだということを、暗に物語っていた。
「あの、すみません。お忙しいのに、連絡もせずに突然……」
「あら、いいえ。嬉しいわ。ありがとう」
恐縮する私達にお茶を出しながら、お母さんはにこっと笑みを見せた。
直後私達二人を眺めて、何とも言えない表情になった。
「綾城に入ったのね……」
制服を見てすぐにわかったのか、お母さんはポツリと呟く。
「あ、はい。……普通科なんですけど」
「ふふ。不思議なものね」
お母さんの言葉の意味がわからなくて黙っていると、お母さんはふっと瞳を優くんの写真に向けた。
「優ね。綾城の中等科に進学が決まってたの」
「えっ!?」
私と折坂くんが同時に叫ぶと、お母さんは写真を見つめたまま頷いた。
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