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◇◇◇◇
優くんの家を出た時は、辺りはすっかり暗くなっていた。
お母さんは門の外まで、私と折坂くんを見送りに出てくれた。
私達は同時に頭を下げる。
「お邪魔しました」
「………お茶、ご馳走さまでした」
「いえいえ。嬉しかったわ。優に会いにきてくれてありがとう」
長い髪を耳にかけながら、お母さんは微笑んだ。
そうしてゆっくりと、私に目を向ける。
「きっと優も喜んでるわ。あの子、リンちゃんのこと大好きだったから」
「…………っ」
改めてお母さんに言われて優くんの気持ちを痛感した私は、唇を噛み締めながら深く会釈をした。
複雑な気持ちに襲われて、どんな表情をしたらいいのかわからないまま顔を上げる。
するとお母さんは、スッと一歩前に出た。
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