それでも君が、だいすきだ!

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大学生の俺は、学校からそう遠くない小さなカフェでアルバイトをしている。個人経営のそのカフェは決して時給がいいわけではない。しかし、学校から近くレトロでお洒落な雰囲気の店構えに惹かれ、大学に通い始める前から目をつけていたところだ。 働き始めて1年。店長の和佳子さんも気さくで優しい人だし、ほかの従業員も変わった人ばかりだけど頼れる先輩ばかりで、やはりここにして正解だったと納得している。ちなみに、このカフェの名前の由来となった店主の飼い猫ミーシャにも懐かれ、ちょっと嬉しく思っている。 大学での講義が終わってすぐ駆けつければ、15分と経たずカフェに到着するため、そこから閉店する午後9時まで、学校帰りに週3日ほど働いていた。 今日のシフトは午後5時から。大学の近くということもあり、平日のこの時間帯のカフェは学生で賑わっている。近くの通りにもいくつか居酒屋や商店が並んでいるため、夜には行きずりのサラリーマンやOLも訪れる。 ホールでテーブルの片付けをし終わって皿を手にキッチンに入ると、和佳子さんが俺に意味ありげな視線を寄越した。 「なんですか?」 「啓太ァ、あんたさあ、最近良く働くようになったじゃん。急にどうしたの?」 和佳子さんはにやにやと笑いながら俺の脇腹を小突いた。 そう。週3日でしか働いていなかった俺が、ここ3ヶ月前から、休日を除いて毎日のようにシフト申請を出しているのだ。和佳子さんが不審に思うのも頷ける。ただ、この半笑いはその答えを知っている顔だ。 「まる先輩から聞いたんですか?」 まる先輩とは、俺の2個上の「丸宮涼」さん。彼は明るくて人懐っこい人だが、いかんせん口が軽い。まあバレてもさほど問題ないことだから、彼に話してもいいかと思ったんだけど。それにしても話してからまだ1週間しか経ってないぞ。 「ん~まあ、それもあんだけどね。あんた、好きな子ができたんだって?このカフェに来る子なんでしょ?」 和佳子さんはにやにや顔を崩さない。まったく、この手の話が好きな人だ。俺が口を開くまで引き下がらないことは分かりきっている。現に、俺は皿洗い仕事中だ。俺から理由を聞き出したくてずっとうずうずしていたんだろう。
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