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僕の彼女は完璧だった。
容姿においても、性格においても、
ただ、ひとつ他人と違うことがあった。
僕の彼女は魔女だった。
比喩ではなく、正真正銘、魔女だったのだ。
「ミチエ」
「嫌わないで、嫌わないで、嫌わないで」
泣きながら彼女は言う。
僕自身がすでに彼女の虜なのに、嫌うわけがない。
「嫌わないよ」
「本当に?」
「本当」
抱きしめた温もりに安堵の息が聞こえた。
「例え、君がこの世界を滅ぼそうとしても、僕は許すよ。許してしまう」
それぐらい僕は君が愛しい。
「ただ、ひとりで元の世界に戻るつもりなら、僕を殺して行って」
その時、初めて彼女に頬を張られた。
「そんなこと、しない」
泣きながら言う彼女も愛しくて、僕は笑った。
「知ってる。ミチエが僕のこと愛してるの」
「……」
「僕の欠点は君に名前ごと心を奪われたこと、君の欠点は僕を愛したこと」
「……そうよ。だから、殺してなんかやらないし、世界も滅ぼしてなんかやらない」
泣きながら金色の双眸を輝かす美しい彼女を、僕はいつまでも見ていた。
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