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2001年 6月2日 夏樹 9才
カタカタ カタカタ
筆箱しか入ってない黒いランドセルからは、軽い音しかしない
「夏樹くんは体が弱いので、特別です。みんなは毎日持ち帰って下さいね」
小学校に入学した日から、教科書は全教科二冊ずつ学校の机の中と、家にある
宿題はプリントのみ
夏樹の教室での場所は、横並びの机から外された教卓の前に置かれた机
授業中、先生に怒られることも『夏樹くん、答えなさい』当てられることもない
「ズルい! お前ばっかり」
ガン!
蹴飛ばされた机から、バサバサ 音を立て落ちていく教科書
遠くに投げられた椅子も、彼らに取っては軽い物
「良いよなあ。俺も、腹いてー! 算数休みまーす」
ゲラゲラ笑うクラスメートたちを、じっと見詰めて俯く
ズッ ズッ
両足を踏ん張って、引っ張っても
数ミリしか動かせない岩のように重たい椅子と机を、諦めることにして
散らばった教科書を集め、丁寧に重ね置いていく
クラスメートたちは、知らんぷりで手伝ってはくれない中
教室の扉を開け、みのり先生が入ってきた
「あらあら、倒しちゃったの」
椅子と机を倒されたのだと気付いても、みのり先生の呆れた視線は夏樹を射抜く
「ごめんなさい」
ギャハハハハ
笑うクラスメートたちの前で、机と椅子を戻して貰ったお礼を言って
ポツン 一人座って受ける授業
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