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「イェーイ、給食だあ」
待ちに待った給食の時間
机をガタガタ鳴らしながらくっつけて、教室のあちこちに出来る食卓を羨ましい気持ちで眺めた
自分で動かせない机を、動かしたつもりで
一年生の時から4年間愛用の筆箱(名前はパコ)を、引き出しから取り出す
一緒に食べようね。パコ
会話もしないし、動くことも出来ない友だちを机の端に、そっと置いた
白衣を着込んだ給食当番の前に、プラスチック容器を抱え並ぶ
大さじ一杯のご飯
一口で飲めるカレースープ
片隅に残る崩れたハンバーグの欠片
サラダのチシャ一枚
並び直して紙パックの牛乳を、パコの前に置いて
「いただきます」
話し声、笑い声の響く教室で、黙々と食べた
午後の授業は体育
グラウンドへと出て行くクラスメートたち
夏樹は一人、保健室へ
窓の近くに置いて貰った椅子に座って、6月未に行われる運動会の練習を見学
「赤組のみんなは東側、白組のみんなは西側に並んで」
はーい
夏樹にしか見えない憧れの赤白帽子を、装着
パタパタ踵を動かして
夏樹も赤組の一番前に移動
「4年生は、ダンスと障害物競争です。頑張って練習しますよ」
はーい
ダンスの移動はスキップ
ランラン ララン
ピョンピョン ピョンピョン
踵を交互に動かして、スキップで軽快に移動
「隣のお友だちと手を繋ぎましょう」
はーい
伸ばした夏樹の手と手を繋いでくれるのは、知っている手
右に春樹兄さん 左に冬樹
クルクル回ってしゃがんで、立って、腰に手を当てて踵をチョン
夏樹に笑ってくれる兄弟を思い浮かべ、ダンスを踊りきった
2001年 6月3日 曇り
トコトコ頑張って歩く夏樹に、おばさんたちが気付かないのも、いつもの登校風景
「あーあ、冬樹くんったら、リコーダー押し込んじゃてぇ」
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