第1章

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カタカタ カタカタ 軽い音の響くランドセルを背負い、班の皆から少し遅れて通学路を歩いていく 「おはよう」 「「おはようございまーす!」」 黄色い旗を手に見送ってくれる近所のおばさんたちに、元気に挨拶して登校 明日は雨らしいわよ ゴミの分別の仕方が悪い人がいて、困るわ そっかぁ、明日は雨なんだ ペコリ 話に夢中で気付いて貰えなくても、毎朝、おばさんたちに挨拶する 6年生のさゆりちゃんは、登校班の副班長さん 彼女を見上げた冬樹の鳶色のまん丸な目に見詰められ、ポッと頬を染めたさゆりちゃん 彼女の手が教科書とリコーダー、体操服で膨らんだランドセルに手を伸ばすより早く 「冬樹くん!」 6年生のさゆりちゃんを、キッと睨み付けた冬樹と同級生のももこちゃん 「直してあげる」 髪を結んだ大きなピンクのリボンを、ふわふわ揺らし、冬樹のランドセルに触れた 「えー? 小さな親切 大きなお世話ですー。 触るなっての」 クルッと身を翻した冬樹が、ニカッと笑う 「あんまし近付いたら、スカートめくっちゃうぞ」 さゆりちゃんとももこちゃんのスカートを、捲る振りをしたイタズラっ子の冬樹 「キャー 冬樹くんのスケベー」 叩く振りをしたももこちゃんから逃げるべく、後ろへと振り返った冬樹は、夏樹に微笑んだ あ・・・・・・、冬樹が来る 「こっわー。 助けて、夏樹」 一生懸命歩いても、みんなから遅れてしまう夏樹の後ろへ隠れた冬樹が笑う 「一緒に行こう」 小さな夏樹の手をスッポリ包む、冬樹の大きな手 ドキドキ わくわく 嬉しくなって、大きく頷き 「うん」 ダンスで繋いだ冬樹の大きな手を、夏樹も握り返した (大丈夫 夏樹のペースでいい) 班のみんなに聞こえないよう、小さな声で囁いてくれた弟に うん 頷いて、頑張って歩く 夏樹のペースで歩いたのでは、冬樹まで遅刻してしまうから
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