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2015年 3月12日
「高校? どこのさ」
リビングに吊したハンモックの中は、冬樹のお気に入りの場所
気持ち良さそうに閉じていた眼を、薄く開け
「夏樹となら何処でも行くけど、場所だけは教えて」
にっこり笑って手を振った
この手に、地図を寄越せということらしい
天井を見上げ“やれやれ”首を振り
「横着してないで、降りてこい」
ため息を吐くようにリビングの床を、指し示した春樹兄さんに頷いた冬樹
ハンモックの端から、クルッと回転して
体操選手のように膝を軽く曲げ、軽やかに着地した
「猿だな」
ボソッと呟いた春樹兄さんに共感の意を示して「ふわぁ」夏樹も欠伸しながら頷いた
狐神崩御から六年の月日が過ぎ去った
一度は体力を落とした冬樹だったが、持ち前の負けん気を存分に発揮して
今では、猿
身軽な動きで、民家の屋根やマンションの屋上を飛び、走り回っている
『なぜ、わざわざ屋根の上を?』
夏樹の疑問に
『何もないから』
歩行者や車がランニングの邪魔なのだと言って、笑っていた
万が一足を踏み外しても
冬樹の影として、ピッタリ寄り添う睦月が助けるから平気なのだそう
六年の間
家の中に籠もっていた夏樹と違い、充実した生活を送る冬樹が戻って来た理由は
20才を過ぎた3年前ころから、貢ぎ物の匂いが薄れ、一年中外出できるようになったかも?
と、期待に胸を膨らます夏樹の夢を、叶えるため
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