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レンジに入れられずに済んだボウルに卵を割り入れて、甘い卵焼きが好きなこの人の為に砂糖とほんの少し生クリームを入れる。それから今時お馴染みの四角いフライパンにバターを溶かして……。
そうこうしている間に、調理台の上に置いていたホワイトボードを店長が手に取った。
「えり。"Restaurant"だろ?頭文字は大文字だぞ?」
「え?」
どうやら書き間違えていたようで。ケータイで変換したまま書いてしまったのだ。
とりあえず卵焼きを仕上げて皿に乗せ、レタスとプチトマトを添えてやる。
「書き直さなきゃ……あ!」
ティッシュペーパーでRだけ書き直そうと思ったら、消えない。また慌ててペンを見れば、油性ペン。
「えり、店の名前くらいきちんと書けよ」
箸で卵焼きを挟もうとした店長は苦笑いしながらひと切れ頬張った。
「味、見た目共に最高。切り分けてくれてたら満点」
がっくりと肩を落とす私の頭を優しく撫でて、店長は卵焼きの皿を片手に厨房を出ていった。
……あぁ、切るの忘れた。
そのあとなんとか洗剤を使って油性ペンの文字を消し、書き直した。
いつもそう、失敗するのは……私。
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