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僕は、
福田将太、小学4年生だ。
僕は恋をしている。
クラスのマドンナ、早野鈴江さんに。
彼女は芸能界にスカウトされるほど可愛く、
長身長髪で、中学生にも何度も告白されてると,
クラスの女子が話していた。
そんな小学校のマドンナなど、
勉強もスポーツも平均的な成績の僕には高嶺の花だ。
もちろんイケメンでもない。
だから憧れで終わると諦めていた。
あの出来事が起きる前までは。。。
1月7日、年が明けて初登校だ。
僕はいち早く学校に来た。
クラスに入ると早野さんが1人、
席でポツンとしていた。
心臓の鼓動が早くなる。
自分の席に着くと、早野さんが近づいてきた。
どんどん心臓の鼓動が早くなる。すると声をかけられた。
「福田君、あのね、習字の宿題をみせてほしんだけど。」
この日は宿題になっていた習字の回収日だった。
僕は緊張と喜びで胸がいっぱいになった。
言われたとおり差し出す。
「福田君、これ交換してくれない?」
「え? どういうこと?」
僕は早野さんの言葉を理解できなかった。
早野さんは後ろに隠してあった紙を差し出すと、
そこにはおそろしく汚く
「謹賀新年」と書かれてあった。
思わず僕は口を開けたまま、
早野さんとその文字を交互に見た。
「福田君て習字を習っているんでしょ。
字がきれいだからいいなって。
まだ名前書いていないし、だめ?」
小学生とは思えない上目遣いと甘えた声で、
僕を誘惑する早野さん。
お父さん、
綺麗なおねいさんのお店に行く理由が分かったよ。
「うわ、きたねー文字。」
「なんだよこれ。だれがかいたんだよ。」
「読めねーよ、象形文字だろこれ。」
「恥ずかしいなこれ。えっ福田がかいたの。」
「まじかよ福田、何のために習字を習ってんだよ。」
僕の背中に誹謗中傷の言葉が矢のごとく刺さる。
「うわー早野さんの習字きれいね!」
「すっごーい。さすがマドンナね。」
「まじで付き合いたいわ。完璧だ。」
早野さんは褒められている。
これでいいんだ。これで。
ちらっと早野さんをみると、
ニヤリとこちらを見ていた。
僕と早野さんだけの秘密だ。
完璧な彼女は汚文字だったのだ。
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