第二章

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 「考えてみたのですが、これが見えるって事はいつか課長は私と同じようになるって事じゃないのでしょうか」  「えっ?」  彼女の言葉に私は一瞬引いた。  「私も最初はこんな物は背中になかったですし、子供の時に死にそうな怪我をして気付いたら見えるようになったんです」  「う~ん…」  私は腕組みをして考えた。  「つまり、死にかけた体験をするとそれが付いてくるかも知れないって事か」  「もちろん誰でもそうなる訳ではなくて特別な人だけだと思うんです。それが生きている時に初めて見える人なのかなって」  彼女の曖昧な表現でも私は理解できた。  「そうだな…自分が特別だとは思わないが、もしそうなったら考えるかもしれないな。生きる事や死ぬ事の意味を…」  私は気分が重くなりそうになったが、  「まあ、それはそうなったら考えるか。君と仕事ができて良かったよ。営業でも頑張ってくれ」 と言いながら彼女のコップにビールを注いだ。
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