第二章

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 それから二年後、彼女はアメリカへ転勤してその翌年に退職した。  何百年もの記憶を持つ事が長所になるのか、それとも膨大な記憶に苦しんで欠点になるのか…  今はわからないが、いずれ私にもわかるだろう。  爆発事故が起きたこのオフィスで瀕死の重傷を負いながらも生き残った私や部下達の背後で揺れる球体を見ながら私は毎日そう思っている。  終業のチャイムが鳴った。  「課長のそれ、一瞬黄色に変わりましたよ」  部下の若い男が私の背中の物を指差して言った。  「ああそうか、ありがとう」  私は軽く答えた。振り返って窓の外を見下ろすと歩道の所々で小さな光の粒がゆっくり動いていた。
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