第一章

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 私、柳川雄一は四十五歳の独身で文具メーカーの技術開発課長である。  この歳で課長が妥当なポストかわからないが、今は現場を離れて管理職の仕事をしている。  幸いにも部下達は優秀で大ヒットとまでいかないが、そこそこ売上が好調な商品を開発しており、おかげで私の首もつながっている。  以前この技術開発課に富永有紀子という二十代後半の女性社員がいた。  少し痩せて冷やかそうだが、勘が鋭く気が利いてとても優秀な女性だった。若いのに周りからも頼りにされていた。  他の課長連中と打ち合わせをすると自分の所にあんな子がいたらいいのにといつも羨ましがられた。社内で彼女の評判はとても良かった。  それで私は鼻高々で自慢したいところだったが、彼女の話になると冷や汗が流れる位に辛くなった。  それは私には彼女のある物が見えたからだ。  それは彼女がこの課に来て数日経ってから見えるようになった。最初は私の目がおかしくなったのかと思った。だが違った。確かに見えたのだ。  彼女の背後に白い球体がゆらゆらと浮いていた。  そう言うと多分『会社を休んだ方がいいんじゃないか?』と思われるかも知れないが決してそれは幻覚ではなかった。
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