第一章

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 ある日、部下達が打ち合わせや外出でいなくなった時に彼女がお茶を持って来てくれた。  「課長どうぞ」  彼女はいつも通り淡々と机の上に茶碗を置いた。  私は「ありがとう」と答えて書類から茶碗に目を移した。そして彼女を見た。  彼女の背後にまた白い球体が浮いていた。  「あの、富永さん」  「はい?」  彼女は微笑んで返事をした。  「その…何だ、私が疲れているのかも知れないから軽く聞き流してくれ」  何でこんなに気を遣わなくてはいけないのだと内心イライラしながら頭の中で言葉を選んだ。  「君の背中の後ろにある物だが」  「はい?」  彼女は不思議そうな表情で答えた。  「いや、何でもない。少し疲れているみたいだ。ちょっとトイレに行ってくる」  私が立ち上がろうとした時、  「ああ、これですか」 と彼女は自分の背中の辺りを指差した。
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