第二章

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 それから一年程経ってその白い球体はあまり気にならないようになった。おかしな話だが慣れるとどうでも良くなったのだ。  私にしか見えないのだから私が黙っていれば何も起こらないと言い聞かせているうちに気持ちが落ち着いたのかも知れない。  彼女は部下達と明るく話しながら見かけによらない長年蓄積された記憶と勘で仕事をバリバリとこなしている。私にとってそれだけで良かった。それを割り切りか他人に無関心とみるか微妙だが…  ある日、尾野部長からメールで呼び出された。  「柳川君、情報システム部から報告が来ているのだが業務時間中に変なサイトを見ているようだね」  「えっ?そうですか」  私はとぼけた表情で答えたが、内心しまったと思った。  「霊視、除霊、超能力…。随分怪しいサイトを見ているようだが変な霊感商法にでもはまっているのかね」  部長の口調が冷たかった。半年程前に会社のパソコンに監視ソフトが入ってからサイトの閲覧履歴が情報システム部に筒抜けだったのを忘れていた。  今まで興味本位であの白い球体について軽く調べる事が時々あった。  「少し目先を変えてオカルト風の商品が出来ないか調べていたんです。」  我ながらすごい言い訳だと思った。でも信じてもらえるだろうか、部長の無表情な顔を見ながら緊張した。
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