第二章

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 「まあそれならいい。君の変わった物の見方は評価しているが、程々にしておいてくれ」  「わかりました」  私は明るく答えた。  (私は変わっているのか?あんまり意識していなかったが周りからそう見られているのか…)  部長の言葉が妙に引っ掛かったが、この場を切り抜けられて安心した気分の方が大きかった。  「あと、君の所の富永さんだが」  その安心した気持ちに大きな氷の塊をぶつけられた様な感覚になった。彼女がどうしたのだろうか、平静を装っていたが心臓の鼓動が高まった。  「急な話で悪いが営業部に移ってもらう事にした。異動は前から本人が希望していたのだが、来月営業二課の田中君が名古屋支店に移る事になってね。富永さんに後任になってもらう事にした」  「あの、彼女はうちに来てまだ一年程ですが…」  「別に君に不満で異動を申し出たのではないから安心したまえ。そういう事で本人には明日言うから引き継ぎの手配をしておいてくれ」  部長の本題はこれだったのかと思いながら、彼女が他の部署に移る事への安心と不安が同時に生まれた。よくわからないが何か不安だった。  翌日の午後、部長から彼女に内示が出て二週間後に営業部へ異動する事になった。
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