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私は緊急の会議を開き、部下達に引き継ぎを指示した。
部下達はがっかりしていたが、彼女は丁寧に礼を言っていた。
引き継ぎは順調に進み、翌週の金曜日に彼女の送別会を開いた。
居酒屋で彼女は部下達と楽しそうに話していた。私も適当に談笑しながら箸を進めていた。
彼女が「どうぞ」とビール瓶を差し出した。私は「ありがとう」とコップを持つと隣に座っていた部下の女性が彼女に席を譲った。彼女は「すみません」と言いながら隣に座った。
彼女が私のコップにビールを注いだ。
「随分急で驚いたんじゃないのか」
「いえ、前から希望を出していたので」
彼女は笑顔で答えた。相変わらず背後には白い球体が浮いていた。
「でも私のこれが見えながら普通に接して下さって感謝しています。今まで見える人はいましたが、その度に変な表情で見られて嫌だったんです」
「まあ慣れたからかな。でも体は大丈夫なのか」
私はビールを飲みながら訊いた。
「ええ、普通に生きているって感じです。でもこの体もあと何年かで解放しないといけませんが」
この手の話はさすがに慣れずに「えっ!」と小声で驚いてコップを置いた。
「解放って、君は何というか…生まれ変わるのか」
「生まれ変わるというより他の体に移るんです」
私は右のこめかみを指で押さえた。
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