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「こうちゃん?いる?」
「大丈夫ー、ちゃんといるよ」
これが唯一完璧無二の姉の、欠点。
僕の姉は、
夜中にひとりでトイレに行くことが出来ない。
話によると、
小学生の低学年の頃、夜中にひとりでトイレに行った所、理由は知らないがトイレのドアが開かなくなり出られなくなったらしく、
そのトラウマでひとりで行くのが怖い、んだと。
でも恥ずかしいらしく、これは家族しか知らない秘密であった。
「こうちゃんー、いるよね?」
「・・・」
よっぽど怖いらしい姉は、数秒毎にこのセリフを聞いてくる。
だから、たまに意地悪で無言になってみれば、
「こうちゃん!?いないの!?こうちゃん!?」
扉の向こうで焦る姉。
その声は今にも泣きそうで、それに密かにきゅんとしていたり、しないこともない。
「ふふ、ごめん、いるよ」
「っあ、よかった・・・。
おまたせ。いつもごめんね、こうちゃん」
「いーえ」
可愛いなぁ。
憧れの存在である姉にまさかこんな一面があるなんて、誰も思わないんだろうな。
この日常に、実は少し優越感を覚えているなんて、
みんなにも姉にも、秘密である。
「おやすみ、こうちゃんっ」
「おやすみ、姉ちゃん」
end
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