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ギュッと唇を噛みしめて涙が溢れそうになるのを耐えていると、「そのことか」とユーリが低く声を漏らした。
「母さんには俺が説明して納得させるから、キララは気に病まなくていい」
「でもっ――」
それじゃあ私の評価は回復するどころか、息子を使った卑怯な嫁、なんてレッテルを貼られてしまうだけじゃない。
とは続けられず、ピンと張ったシートベルトに縛られるまま、力が抜けた体を背もたれにぐったりと預けた。
「でも、何だ?」
「……何でもない」
理由なんて言えるわけない。
ユーリのお母さんに嫌われたくないだけ、だなんて話したら、そんな理由かとがっかりさせるのは目に見えているから。
しかし、ユーリがそれで引き下がるはずがないことも分かっていて、高速道路を快適に走っていた車が、無意味にパーキングエリアに入っていったところで覚悟を決めた。
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