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玄関のドアが閉まる音が聞こえると、瑠李ちゃんはソファーにすとんと腰を下ろした。
「コーヒーかお茶しかないんだけど飲む?」
「……お茶って何茶?」
「緑茶と麦茶」
「麦茶……下さい」
ムスッとした顔をしながらも“下さい”と付け加えた瑠李ちゃんに頬が緩むのを感じながら、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出した。
どうぞ、と瑠李ちゃんに麦茶の入ったグラスを手渡すと、小さな声だったけれど「ありがとう」と感謝の言葉が聞こえた。
根はとっても良い子なのだとよく分かる。
ここへ突然来たのも、私に突っ掛かってきたのも、兄であるユーリを想ってのことなのだ。
兄を想うからこそ、瑠李ちゃんが今出来る最大限のことをしているのだろう。
「……お兄ちゃんと……結婚するつもりですか?」
麦茶のグラスを両手で握りしめた瑠李ちゃんが、重々しそうに口を開いた。
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