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駐車スペースで動きを止めた車が、ブロロロと低く響くエンジン音も停止させ、車内は無音状態になった。
隣でカチャとシートベルトの外れる音がして、私も釣られてシートベルトに手を掛けると、その手にユーリの骨ばった大きな手が重ねられた。
「理由……話して欲しい」
静かな車内でジッと見つめられ、息を吸うことさえも忘れてしまいそうになる。
「……ユーリ」
「俺がキララを好きになったきっかけ、知ってるか?」
「え?」
重ねられた手がキュッと握られ、思わず視線を手元に移してしまうと、俯いた私の頭にユーリがチュッとキスを落とした。
「仕事に誇りを持ってる姿が格好良くて、男の俺が仕事に関しては負けたな……と思った。それがきっかけ」
重ねられた手の甲に、ポタッと涙が一粒落ちた。
それは、ユーリが私の仕事に対する姿勢を買ってくれていたことが嬉しかったのと、だからこそお母さんに納得させると言ってくれたのだと知ったから。
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