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「可能性は低いと思いますが……しかし、実際にその直後に壊滅したわけで。攫われた女に話を聞きたいところですが、その時はいずれも町中がパニックになっていたようで、誰もその女達を覚えていません。見つけ出して尋問するのは不可能かと」
「じゃあ町の名前は?」
「はい、こちらに。四つの町や村でオーク軍の軍用車が目撃されています」
メモ用紙を渡された。キャメリア村、フリージア町、プルメリア町、マリーゴールド町……マリーゴールド町は確か、カサブランカ村の隣町だったな。この中に、犯人がいるのか? いずれにしても軍一つ潰すなど、ただの女ではない。ということは……。
「チェリーを呼べ」
親衛隊長が出て行ってから五分後、チェリーが部屋に入ってきた。俺は親衛隊長の報告をざっくりとチェリーに説明した。
「どう思う? もしこの四つの町村で攫われた女達の中に魔女がいたとしたら……」
「正直に申し上げます。私はあの現場で、ほんの微かにですが魔力の残り香を感じました。しかし日数が経っていたためか、かなり薄まっていて確証が持てずに報告しませんでした。ですが今の話を聞いて確信しました。少なくとも、あの現場で魔法が使われたことは間違いありません。しかも残り香は二種類、つまり二人の魔女がいたようです」
「むっ……小さな事でも気付いたことがあれば、報告しろといつも言ってるだろう」
「申し訳ありません。しかし、仮に魔女の仕業だとしても、たった二人で軍一つ潰すなんて事が出来るとは思えませんが……。仮にその二人が、戦争で戦った魔女ぐらいの強さを持っていたとしてもです」
「だが実際にやられているんだ。とにかく、もし意図的に攫われてオーク軍を潰したと考えると、敵は今後も俺達を狙ってくる可能性が高い。一応バーチとメイプルには注意を呼びかけておこう。チェリー、お前はさっきの町村へ向かい、魔女を探してくれ」
「仰せのままに」
そう言ってチェリーは足早に部屋を出て行った。魔女が再び俺に牙をむくか……面白い。何度でも返り討ちにしてやろう。俺はまだ見ぬ二人の魔女が惨たらしく処刑される光景を思い浮かべてほくそ笑んだ。
*
「はい! これはお婆ちゃんへのお土産ね。このお菓子は餡子がたっぷり入ってて美味しいよ」
「すまないねえ。ありがとう」
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