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「はい……黙っててすみませんでした。でも、私ではとても戦いのお役には立てないと思って…」
それはそうだろう。戦うための魔法は全て禁呪なのだから、普通の魔女は戦えない。
「あんた、どこ出身? 家族は?」
「キャメリア村です。家族は……いません。私、ずっと孤児院で育ったんです。孤児が多くて定員オーバーになってしまったので、今はそこも出て部屋を借りて一人で暮らしていますが」
「……戦争か?」
「はい。私はまだ赤ん坊だったので両親のことは何も覚えていませんが、父は戦死、母は魔女狩りで処刑されたと聞いてます」
同じだ。祖母がいるかどうかの違いはあれど、彼女もまたフォレストに大切なものを奪われている。
「ねえ、アイリス。フォレストが憎い?許せない?」
「……はい。あいつらさえいなければと、何度も思いました。でも、私なんかにはどうすることも」
「それはあんた次第さ」
「えっ?」
意味が分からないといった顔だ。さてどうする。確かに才能はあるが、こいつの性格は明らかに戦闘に向いていない。いや、重要なのは、奴らを憎む心だ。自分でも今言ったが、全てはこいつ次第だ。駄目元で誘ってみるか。
「私と一緒に、フォレストに復讐する気はない?」
「え、えぇ!?」
「私もあんたと同じような境遇だ。奴らが死ぬほど憎い。奴らを皆殺しにすることが私の目的だ。今回は私一人で何とかなったが、正直なところ仲間が欲しい」
「で、でも私なんかロゼさんの足手まといにしかなりません。禁呪だって一つも使えないですし」
「それは私が手取り足取り教えてやる。問題は、あんたにやる気と覚悟があるかどうかだけだよ」
アイリスは下を向いてしまった。まだ十代半ばの少女だ。その少女に、国一つ相手に喧嘩を売ろうと誘いを持ちかけているんだ。我ながらどうかしてる。断られて当然だ。しかし……。
「…………やります。私に戦い方を教えてください!」
アイリスにはもう失う物は何もない。だから乗ると思っていた。私はふっと笑うと、拠点の敷地内に残っていた軍用車へと歩き出した。運良く鍵は付けっぱなしになっていた。これで帰ろう。もう日が暮れそうだ。祖母も心配しているだろう。
「えっ、ロゼさん運転出来るんですか?」
「やったことは無いわ。でもまあ、大体わかる」
「……彼女達も送ってあげた方が良かったのでは」
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