魔女狩り狩り

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プロローグ  北の国フォレストと南の国ガーデン、両国の戦争は五年目に突入した。劣勢が続くガーデンは、新戦力として国中の魔女達に戦争への参戦を要請した。これに対し、一部の好戦的な魔女と報奨金に目が眩んだ魔女達は参戦を表明。それによって一時的に戦況はひっくり返ったが、猛将として知られるフォレストの若き王ウォルナット率いる軍隊の圧倒的な軍事力の前に、やがてガーデンは衰退していき、フォレストの勝利という形で、遂に長きにわたる戦争に決着がついた。  ガーデンは完全にフォレストの植民地となった。しかし、これだけでは終わらなかった。一時的とはいえ、突然戦場に現れフォレストを危機的状況に追い込んだ魔女をウォルナットは恐れた。そして国を挙げての大規模な魔女狩りが行われた。魔女は皆それぞれ固まって村で生活していた。そのため見つけ出すのはたやすかったのだ。戦闘能力を持つ魔女は全て戦争で死亡している。平穏な生活を送っていた魔女達はなすすべ無く捕らえられていった。捕らえられた魔女達は、見せしめとしてガーデン城の庭で公開処刑された。ある者は首をはねられ、ある者は八つ裂きにされ、ある者は火あぶりにされた。 「お母さん……」  まだ十歳になったばかりの少女は群衆の間から、生きながら焼かれる母親の最期を見ていた。そして、城を見上げその眼に焼き付けた。まるでショーでも楽しむかのように、ガーデン城のベランダから満足げにその様子を見下ろしている、あの悪魔……ウォルナットを。 殺してやる……いつか必ず……! 第一話 復讐開始 「ロゼ、まだ寝てるのかい?」  祖母のその声で私は夢から覚めた。あれから十五年も経つのに、未だにあの日の夢を時々見る。その時は決まって目覚めが悪い。母や同胞達が言っているのかも知れない。決して奴らへの怨みを忘れるな。仇をとってくれと。忘れるわけがないのに。 「起きたなら畑の収穫を手伝っとくれ」 「うん。ちょっと待ってて、おばあちゃん」  身を起こし、洗面台へと向かう。顔を洗って、鏡に映る自分を見た。腰まで真っ直ぐに伸びた黒い髪。青白い肌。鋭くつり上がった冷たい目。口紅を塗っていないのに真っ赤に染まった唇。私のことを魔女だと知っている人が見れば、ああいかにもと言いそうな顔だ。身長と胸も無駄にでかいせいで、目立ちたくないのに目立つ時も多い。
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