魔女狩り狩り

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 アイリスには地下室で自主練させている。全ての禁呪を覚えさせるのは不可能なので、使い勝手の良い禁呪に絞って実演して見せた。自分の身は自分で守れと言ってある。それにしても、アイリスは私が思っていた以上の天才だった。修得の早さは私以上だ。後はそれらを自在に操れるようになれば、この上ない戦力になりうる。  私の方は、時間を見つけてはバーチの拠点で張り込みを続けた。医者が現れるのをひたすら待った。バーチの拠点はオークのよりも大きく、館というより城だった。粘ること一週間、遂にそいつは現れた。白衣を着た男が一人、身分証明書のようなカードを警備員に見せてから中に入っていった。医者と見て間違いないだろう。更に待つこと二時間。出てきた。あの医者だ。私は医者を尾行し、人気の無いところに出るのを待った。路地裏に入った、チャンスだ。私は音を立てずに後ろから近付き、指揮棒を取り出した。 「ぎゃっ!」  首筋に電撃を食らわせた。倒れた医者を物陰に引きずってから、こいつの荷物を漁った。あった、医師免許だ。こいつを上手く偽造すれば、怪しまれずに中に入ることが出来る。運良く、個人経営の町医者のようだ。大病院の雇われの医者だと、病院に身元を確認されるとバレてしまうからな。スケジュール帳も見つけた。次の往診は来週の同じ曜日、つまり一週間後に決行だ。  使えそうなネタはこれぐらいか。私は医者にもう一度指揮棒を当て、少し強めに電気を流した。これで一週間は目が覚めないだろう。後は放っておけば誰かが救急車を呼んでくれるだろう。この医者が意識を取り戻したときには、既に用は済んでいるというわけだ。 *  地下室では、アイリスが汗だくになって杖を、つまり万年筆を振り続けていた。まだ少し不安が残るが、やはり飲み込みが早い。 「あ、ロゼさん。どうでしたか?」 「上手くいったよ。ほら」  私が放り投げた医師免許を、アイリスは慌ててキャッチした。複製と偽造はアイリスに任せることにしていた。私は正直なところ、十一歳の頃から禁呪の修得にかまけていたせいで、戦闘に使えない一般の魔法はあまり得意ではないのだ。 「期限は一週間だ。それまでに作りな。それがあんたの最初の任務だ」 「は、はい。頑張ります」  そう、残り一週間。今から楽しみだ。待っていろバーチ……お前の処刑方法は、既に考えてある。
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