魔女狩り狩り

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 外に出て空を見上げる。カサブランカ村の天気は今日も快晴だった。パンをかじりながら畑に向かう。祖母は既に芋掘りを始めていた。髪を縛り、軍手を付けた。魔法を使えば数分で終わる作業だが、こんな所で使うわけにはいかない。手で芋掘りを開始した。祖母は父方の祖母だから魔女の血は引いていない。父は戦死、母は魔女狩りで殺された。身寄りのない私を、祖母は老体に鞭打ってたった一人で育ててくれたのだ。  芋を掘りながら道行く人を見る。何人かは子供の頃に住んでいた村の住人、つまり魔女の生き残りだった。魔女は皆素性を隠し、普通の人間として暮らしていた。かつての魔女の村は全てフォレストの軍に潰され、逃げ遅れた魔女は全て捕らえられて殺された。そのため、もう大規模な魔女狩りは無くなったが、それでも魔女狩りが完全に終わったわけではなかった。うっかり人前で魔法を使ってしまい、魔女の生き残りということがバレて殺されてしまった魔女も何人かいる。逆に魔法を一切使わなければ、魔女ということがバレることはない。  私は今まで、何人かの魔女に声をかけたことがある。フォレストの奴らに復讐しよう、仲間の仇をとろうと。しかし、誰も乗ることはなかった。仲間が殺されたのは悔しいし悲しい。でもどうしようもない。せっかく生き残ったんだから、彼女達の分まで生きよう、と。あの頃は私も十代で若く、何も知らずに「腑抜けが! 臆病者が!」と言ってしまったこともある。しかし大人になってから分かった。仕方がないのだ。元々魔女は世間一般のイメージとは違って、温厚な種族なのだから。人に危害を加える魔法は全て禁呪扱いされているのだ。しかし一部の馬鹿な魔女達のせいでフォレストに目を付けられ、無関係な大多数の魔女が理不尽に殺された。皆フォレストが怖いのだ。今更奴らに逆らったところで勝ち目はない。無駄に殺されるだけ。そう思うことを、どうして責めることが出来るのだ。私は仲間を集めるのを諦めた。だが、一人でも勝算は充分にある。何があろうと、復讐は絶対に諦めることはなかった。 「ふう、こんなもんでいいかね。ロゼ、芋を玄関前に持っていっとくれ。後で業者さんが買い取りにきてくれるそうだ」  「うん、わかった」
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