魔女狩り狩り

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 芋がぎっしり詰まった籠は重さ数十キロはある。祖母にはもう運べない。一通り運び終えてから、私は自室に戻った。祖母は疲れて居間で寝ている。チャンスだ。懐から指揮棒を取り出す。母の形見だ。一見単なる指揮棒だが、これが私の魔女としての杖だ。魔力が通っていて細長い物なら何でも杖になり得るのだ。いかにも魔法の杖ですと言わんばかりの形をした杖もあるが、軽くて持ちやすいこの指揮棒の方がいい。それを本棚に向け、ゆっくりと左に動かしていく。それに併せて、本棚も床を引きずりながら左に移動していった。本棚の裏には人がギリギリ入れるぐらいの縦長の穴。その先には急な階段が下に伸びている。私は地下室へと降りていった。この部屋の存在は祖母も知らない。  天井高四メートル、約百平方メートルほどの広い部屋。もちろん完全防音だ。魔法を使わなければ、とてもじゃないが女一人でこんな地下室は作れないだろう。部屋の中央にはハリボテの人形が数体置いてある。階段近くに積まれている本の中から、一冊の本を手に取り、最後のページを開いた。この本も今日限りで用済みだ。再び指揮棒を取り出し、何もない空間を指した。指揮棒の一メートル先に、徐々に火花が出来上がっていく。しかし、ある程度大きくなったところで、まるで線香花火のようにポトンと落ちて消えてしまった。 「ちっ。集中力が足らないな」  もう一度指揮棒を構える。目を閉じて、あの日の光景を思い浮かべた。悲しみと憎しみが込み上げてくる。さっきとは比べものにならない大きさの火花が出来上がった。部屋の中央の人形に目を向ける。それに向かって指揮棒を振りかざした。火花が人形にぶつかると、バチバチと物凄い音を立てて人形がバラバラになった。この本の魔法も全て覚えた。本に指揮棒を振り、魔法で火を付けた。
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