魔女狩り狩り

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 私は魔女狩りの日から一年かけて、国中の魔女が住む村を訪れた。どこも既に攻め落とされて廃墟になっていたが、図書館は無事だった。その中から、あらゆる禁呪の本を取り出して持ち帰った。祖母に気付かれないようにするのは苦労したが、何とか数百冊の本を手に入れることが出来たのだ。そして地下室を作り、後の自由な時間は全て禁呪の修得に費やした。昼間は祖母の畑仕事を手伝い、夜は寝る間も惜しんで特訓。禁呪の修得を始めて十四年。あれだけあった禁呪の本も、残り数冊になった。内容が被っている物もあるから、実質ほぼ全ての禁呪を修得したことになる。 「遅くなってごめんね、お母さん。もうすぐだよ……もうすぐだから……」 *  私は芋を売った金で、町に買い出しに来ていた。祖母も近頃だいぶ弱ってきている。栄養のある物を買っていかなくては。 「あっ、ロゼじゃん! あんたも買い物に来てたんだ?」  振り向くと、友人のカトレアが手を振りながら近寄ってきていた。カトレアは五年前に突然カサブランカ村に一人で引っ越してきた。その前にどこに住んでいたのかは知らないし、聞くつもりもない。私もほじくり返されたくない過去があるから、逆に質問されるのが嫌だったからだ。カトレアは顔は美人だが、短髪で服装も男っぽいから、男と間違われることも多い。性格は全然違うが、初めて会った時から不思議と気が合い、それ以来友人として付き合っている。友人とは言っても、もちろん私が魔女であることは知らない。 「ええ、まあ」 「ありゃ、つれない返事だねぇ。機嫌悪いの?」 「別に。私はいつもこんな感じでしょう」 「よく言うよ。お婆ちゃんにはめっちゃ優しいくせに?」 「……」  私は何も言わずに食料品店に歩き出した。 「もう! やっぱ機嫌悪い~!」 「気のせいよ。それより採れたての芋がまだ残ってるから、うちで食べてく?どうせ自分じゃまともに料理なんか出来ないんでしょう?」 「うっ、一言多いなぁ。でもゴチになります!」  そう言ってカトレアは敬礼のポーズを取った。私も最近は畑仕事と禁呪の訓練ばかりで疲れていた。たまには羽を伸ばして友人と時間を過ごすのも悪くないと思った。 * 「ふぅ、お腹いっぱいだわ。ご馳走さま! やっぱお婆ちゃんとこの野菜は絶品だね!」 「ふふ、そうかい? またいつでも食べにおいで。あたしはもう疲れたから寝るよ。どっこいしょ」
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