魔女狩り狩り

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 私も立ち上がり、祖母を支えながら寝室に行った。祖母をベッドに寝かせリビングに戻ると、カトレアはちびちびと酒を飲んでいた。 「ロゼの分も買ってあるよ。一緒に飲む?」 「そうね、頂くわ」  しばしお互い無言でグラスを傾けた。私はこれからのことを考える。復讐の準備は整ったが、問題はいつどのように決行するかだ。まさか単身で正面から堂々と奴らの本拠地に乗り込むわけにはいくまい。やはり各個撃破して少しずつ戦力を削っていくしかないだろう。しかしそれは徐々に奴らの警戒心を強めていくことにもなる。仲間さえいれば……いや、それは考えないようにしよう。果たして一人でどこまでやれるのか。現実的に考えてやはり不可能か。他の魔女が言うように、このまま祖母と静かに暮らしていくべきなのでは……。 「何ボーッと考え事してるの?」  カトレアに話し掛けられ、私はハッと我に返った。 「いや、何でもない」 「ところでさ、あの話聞いた?」 「どの話だ」 「ウォルナット王が明日村に視察に来るって話だよ」 「……!」  私は酒を飲む手をピタリと止めた。ウォルナット……生涯忘れることはないであろう男の名が、いきなり友人の口から出たのだから無理はない。 「……何しに?」 「だから視察。観光って言った方がいいかも。戦争が終わってから十五年、ガーデンの各地をまわってるらしいよ。フォレストと比べて気候も良くて自然も豊かだからね。貧困層以外はみんなガーデンに移り住んできたらしいし。この村は温泉が名物だから、多分温泉にでも浸かりに来たんじゃない?」  奴が来る。実にありがたい。少し弱気になっていたからちょうどいい。奴の顔を見ること以上に私の闘争心を奮い立たせるものは無いだろう。歓迎してやろうじゃないか。 「だ、大丈夫? めっちゃ怖い顔してるけど……。心配することないって! 敵国の王っていっても、もう戦争は終わったんだから、何もされないよ」 「……ええ、そうね」
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