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放課後、澤木君が木邑君と共に図書室へと来る。
「木邑君」
もう一度、会いたいなと思っていたので嬉しくて手を握りしめようとすれば、寸前で澤木君に邪魔をされた。
「俺の目の前で他の男の手を握ろうとしてんじゃねぇよ」
凄みのある目で睨まれて、俺はビクッと縮こまる。
「ちょっと、真一」
ダメでしょうと木邑君が俺の両手を掴んだ。
その暖かい手にほんわかとなりかけ、澤木君から冷たい視線を浴びて凍りつきそうになる。
「優でも駄目」
木邑君の手から俺の手をさらい、握り締められる。
もしかして妬いてくれたのかな、なんて思いながら澤木君を見れば、ちょっと照れながら見てんなよと額を小突かれた。
「解った」
でもお話しするくらいは良いよねと木邑君の言葉に、それくらいなら構わないと俺の手を離す。
「こんなに独占欲が強くて加勢先輩は大変かもしれないけれど、これからも真一の事をよろしくお願いしますね」
頭を下げる木邑君に、俺もつられるように頭を下げる。
「じゃぁ、俺は向こうで本を読んでいるので」
と窓際の席を指を差し、手を上げてそこへ向かった。
あれ、もしかして気を使わせちゃったのかな?
澤木君を見上げれば、俺が言いたいことに気が付いたよで、
「桂司たちと待ち合わせなんだと」
そう教えてくれた。
「あ、小崎が言ってたっけ」
「ふぅん、アンタ、桂司の事は呼び捨てなんだ」
え、なんで、同級生なんだから呼び捨てだっていいじゃないか。
何が気に入らないのか、澤木君が俺を睨む。
「俺の名前は真一だ」
「……知ってるよ?」
なんでそんな事を聞くんだろうと俺は首を傾げれば、鈍いなとつぶやかれる。
「名前で呼べって言ってんの」
呼んでみろよ樹と澤木君に促され、俺はたどたどしく「しん、いち」と彼の名を呼ぶ。
「よし」
と満足そうな笑みを浮かべる澤木君、いや真一がなんだか可愛くて、今度はハッキリと真一の名を呼んだ。
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