後輩の彼

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 授業の内容で調べたい事があるから三十分だけ図書室を使わせてくださいと先生に許可を貰い、俺と真一は二人きりで図書室にいる。  調べ物があるといっていた癖に本棚に向かう素振りはない。 「真一、調べ事があるんでしょう。はやくやって帰ろうよ」  俺に手伝えることはないと聞くが、彼の口から出たのは別の言葉だった。 「樹、俺が前に言った事を覚えているか?」  その言葉に、すぐにある言葉が浮かんだが、口にしないでいると、 「有言実行」  と真一が言い、口角を上げる。 「俺、覚えているなんて言ってないよっ」 「でも、思い当たることがあるんだろう?」  と首筋を撫でられて、顔が熱くなる。 「……知らない」  少し間があいて、真一がニヤッと笑う。 「へぇ、本当に?」  顔が近づいてきて、 「学校でなんてダメだよ」  と思わす口に出てしまい、あわてて口元を手で覆い隠すが後の祭りだ。 「なんだ、やっぱり思い当たっているじゃねぇの」  身体がほわほわとして芯まで蕩けてしまいそうなキスだ。  頭がぼっとして、気持ちよくて、もっと欲しいと強請ってしまいそうになる。 「ふぁっ」  舌が、歯列をなぞり舌を絡め取る。  うまく唾液を嚥下できずに口の端から流れ落ちるが、それすら気にならないほどキスにおぼれる。  このまま流れに身を任せてしまいそうになる。だが、唇は離れ、透明な糸をつなぐ。 「んぁ、しんいち?」 「エロイ顔して」  濡れた俺の唇を、真一の親指で拭い、 「今はキスだけ」  と俺の身体を抱きしめた。 「そう、なの?」  丁度胸のあたりに俺の顔があり、顔をあげると真一の顔を覗き込むようなかたちとなる。  ホッとしたような残念なような、そんな複雑な気分。
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