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試験対策
俺の成績は良くもなければ悪くもない。赤点をとらなければいいや、という気持ちでテストを受けている。
そんな考え自体が駄目なんだと、一年の時から学年トップをキープし続ける真一が俺を冷たい目で見る。
恋人同士になったというのに相変わらず遠慮がない。ビビる俺を余所に鋭い視線を向けてくる。
「桂司にお前の勉強を見るように言っておいたから」
俺の知らない所で勝手に話をつけてた。そういう所はさすが真一だ。
小崎も何気に忙しい人物なのだ。それに自分の勉強だってあるだろう。なのに俺の勉強を見させるなんてそんな迷惑はかけられない。
「見て貰わなくてもいいよ。小崎だって自分の勉強があるだろう?」
一人でも大丈夫だとそう言おうとしたら、
「はぁ? 何、桂司の心配なんかしちゃってるわけ」
いつの間にか壁際に追い込まれていて、しかも距離が近い。
ここでカッコいい決め台詞を言われたら胸がキュンとするのだろうが、顔を近づけて睨まれる俺は縮みあがるだけだ。
「桂司が良いって言ったんだから見て貰え」
解ったなと、俺の唇に軽くキスて離れる。
「ちょっと、真一」
ここがいくら死角であり、皆が俺達の事なんて気にしていないとしても、まだ授業の合間にある休憩時間の最中だ。俺が周りを気にしてびくびくしなければいけない時間ではないはずだ。
「昼休みにはもっと長いキスをしてやるよ。あ、それとも……」
真一は見られても構わないのだろうか。寧ろ、俺の反応を楽しんでいる様に見えなくもない。
「ほら、もう教室に戻りなよ」
これ以上へんなことを言いだす前に教室に戻って貰おうと真一の背中を押す。
「じゃぁ、昼休みな」
と楽しそうに去っていく年下の恋人に、俺はがっくりと肩を落としてその姿を見送った。
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